四階建てのホー

各種のホームの中から私は「サービス付き高齢者住宅」を選んだ。賃貸アパートと必要に応じた介護サービスがセットになっている点を評価したからだ。学習研究社が新規事業として取り組んでいるホームである点も決め手だった。経営基盤がしっかりしていると思った。

賃貸住宅なので、入居の際は二か月分の敷金を支払い、毎月家賃五万九千円を支払う。この他に、共益費二万円、サービス費が三万二千円。食費は一日千五百円だから月額四万五千円で、一か月の合計は十五万六千円となる。これに、介護保険によるサービス、自費でのサービスに対する費用、医療費と小遣いが必要となる。介護が不要な間は費用は小さく、介護度が上がるにつれて増加していく。母は現在要介護1なので、介護費で三万円、医療費が一万円、小遣いが二万円、全部で月額二十二万円ほどになる。このタイプのホームは入居金がないというのも売りの一つであろう。その反面、介護度が進むと月々の費用が相当大きくなるリスクがある。

ホームは「学研ココファン愛甲石田」という。少子化で主力の教育雑誌が売れなくなった学習研究社が始めた新規事業である。子供の頃、学習研究社の雑誌を読んで育った人たちが今や七十、八十代になり、学研のホームに入居して余生を過ごす、まさに揺りかごから墓場までという図式である。ココファンとは、comfortable(快適な)、conversation(会話)、fun(楽しみ)などの言葉を合成したものだ。既に全国で四十二の事業所を展開している。

ココファン愛甲石田は昨年九月に事業を始めた。総戸数は四九戸であり、母は二十五戸目として新築の部屋に入居した。半分の部屋はまだ入居者募集中である。四階建てのホームの真横に「石田子安神社」という大きな神社がある。見学にきた時、立派な神殿と数百年の樹齢を感じさせる緑ゆたかな鎮守の森が気に入り、直感的にこのホームはいいと思った。

ホームに入ると決めた後、母は住み慣れた家族と離れることに大きな淋しさを感じ、何度も泣いた。この寂しさやストレスで、認知症を発症しないだろうかと大変心配した。入居後は、なかなか親しい友人が見つからず、こころもとないと言っている。卒寿を目前にしての大きな環境変化になじむには相当な時間と忍耐が必要だろう。

入居した日、私は食堂で母と夕食を摂り、風呂に入って、同じ部屋で眠った。老人ホームの知識がまったくなかった私は、いきなり老人ホームそのもので生活し、日本の高齢化社会を身を以て体験している。食堂で食事している人たちは、平和で静かな生活を送っている反面、親しい家族と離れて、どことなく孤独な雰囲気がする


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