お昼過ぎに園

次は次女の明美と次男の俊も二人が二十五歳の結婚をした。付き合っている事は誰も知らなかった。とにかく二人には内緒事が多く、結婚すると言ったらどちらの親も驚いていた。共に年齢は二十九歳。大学を卒業した俊は総合商社に入り今は北海道の支店で働いている。数年後の海外勤務に備えて仕事が終わると地元の語学学校に通っている。子供が二人で明美は子育で毎日忙しくしていた。二人とも二番目の子供なので親からはしっかり者と思われている。Antique jewelry


三女の梨奈と三男の学が結婚したのは、今から二年前の六月だった。学は二人の兄と違い養子に入り性は原田になった。共に二十六歳で、梨奈の体の中には初めての子供が身ごもっている。来年の春に生まれる予定だった。夫の学も高校を卒業すると同時に地元の市役所で公務員になり働いている。

今は若者らしく外仕事が多く、仕事の関係上、梨奈の義父と役所内で話す事もあるが、毎日、市民の為に汗を流している。住まいは安い市営住宅に入り車はなく健康の為に自転車通勤だった。この自転車も高校生になって買った物だった。妻の梨奈との初デートの時にも乗った自転車だった。週末の土曜日になると母校のサッカー部のコーチになり後輩達を指導している。梨奈も時間があると夫を見守っていた。

その年のクリスマス・イヴに学は梨奈の体調を考えて、アパートに二人で静かに過ごそうと考えていた。途中、仕事帰りの通勤コースにある小さなお菓子屋さんに寄ると、売れ残りを避ける為に全てのケーキに『三割引き』と大きく書かれた貼紙が見え二人の好きな生クリーム製デコレーションケーキを選んだ。学は急いで戻りそれをテーブルの上に置いて見せると梨奈は驚いていた。それは学の収入が少ない為に買えないと諦めていたからだ。

「学、あの頃とちっとも変わらないね」
「あの頃もそうだし、今も苦労を掛けているけど、ちょうど売れ残ったのを買ってきたんだ」
「でも、そんな学が好きなんだ」
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「窓からケーキを見ていたら無性に梨奈の喜ぶ顔が見たくてさ、思い切って買ったんだ」
「このケーキ美味しそうね」
「店に入ると残りが二個だったんだ」
「あの日もマリンランドのハンバーグ屋さんで安売りのチケットで買ったのを覚えている」
「お昼過ぎに園内に入るとそのまま向かったんだ。腹を空かせては楽しめないだろうと思ってね。二人で二個ずつの全部で四個を買ったけど、直ぐにベンチに座ってパクついたね」
「あの日は二人の初めてのデートだったのよ。学君と呼んだら、その日だけは学と呼べと私に言ったのよ。初めて命令調だけど、でも、嬉しかったの」
「あの頃は、二人とも普通の高校生になりたいと言ってデートをしたけど、その後はお互いに部活で忙しくて、三年になると進学だの、資格だの、就職だのと言って何も出来なかった。でも、その後も続いて今は本当の夫婦になったんだ」
「ところで最初に夫婦になったのを覚えている中一數學。ちょうど私達が四歳か五歳の頃で、学がテレビの見過ぎで私にプロポーズをしたのよ。子供の頃の遊びだから直ぐに夫婦になったけど、本当の夫婦になったのは二年前。それまでも喧嘩もしたし、別れ話も何度もしたけど、それでも続いていたでしょう。それにお互いに必要としていたから結ばれたの」
「ママ事は仮の夫婦だったけど、今は本当の夫婦になった。その証に梨奈のお腹には二人の子供がいるしね。でも本当の夫婦になるとは思っていなかったな」
「あの時に、このまま学君との関係が続いていたら良い返事をするかも知れないわ。と言ったでしょう。私もそうだし、学も約束を守ったのよ」

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